緊張・ストレスからくる下痢の原因と対処法

通勤電車や渋滞の車内・バス旅行などで長時間トイレに行けない・・・大事な会議の前、試験の時など緊張を伴う場面で急に便意に襲われ困ることはありませんか。

下痢が長引くと、腹痛に苦しむだけでなく、排便が心配で外出もままならなくなります。そんなつらい状態からは少しでも早く解放されたいもの。ここでは緊張・ストレスが原因とされている「過敏性腸症候群(IBS)」の理解や症状別の予防策などをご紹介します。

最後までお読みいただけると嬉しいです。

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)とは、検査をしても腸に異常はないのに腹痛、下痢、便秘、膨満感などを慢性的に繰り返す病気です。

症状による不安から日常生活に支障をきたす病気で、「こころ」と「からだ」両方のさまざまな要因が組み合わさり発症します。

国内では推定1,200万人、日本人の10人に1人がこの症状に悩んでいるといわれています。

腸には食べ物からの栄養や水分を吸収し、不要なものを排泄するという働きがあります。

この働きは脳がコントロールしていて、脳と腸の間では頻繁に情報交換が行われています。これを「脳腸相関」といいます。

私たちはストレスを感じると、脳から腸へ向かう神経の信号が強くなり、腸は必要以上に収縮しやすくなります。

また痛みを感じる知覚が過敏な状態になります。過敏性腸症候群の人はこの状態が強く起っている状態と考えられています。

過敏性腸症候群の3つのタイプ

  • 慢性下痢型・・・・長時間トイレに行きづらい状況やトイレのない状況下に置かれると、急激な腹痛・便意を伴い、激しい下痢の症状があらわれます。下痢型は便意が強いのに十分に排便できず、残便感が残ることが多いのが特徴です。
  • 不安定型(便秘型)・・・・腹痛や腹部の不快感とともに下痢と便秘が同じような頻度で起こるのが特徴です。交代性便通異常とも呼ばれ、お腹が張って苦しく、便意はあるが出ないという厄介な便秘です。また、出るときはウサギの糞のようなコロコロした小さな便が特徴です。
  • 分泌型・・・・分泌型は、強い腹痛に続いて大量の粘液を出します。
  • 不安定型(便秘型):①~②の硬い便
  • 慢性下痢型:⑥~⑦の下痢便
  • 分泌型:硬便も下痢便それぞれみられる

どんな人がなりやすい?

几帳面で繊細、感受性の強い人、ストレスを受けやすい人がなりやすい傾向にあるようです。

男性では「下痢型」、女性では「便秘型」が多いとされており、男性では働き盛りの30~40代、女性では20代と50代によく見られます。

近年、スマホやSNS、受験などのストレスからか、男女関係なく10代も増えてきています。

過敏性腸症候群の原因は?

【①】ストレス・不安

脳と腸は密接に関係しており、ストレスや不安を感じると腸の蠕動運動が激しくなり、痛みを感じやすくなります。

トイレに行けない状況で、もしトイレに行きたくなったらどうしようと不安になることで、下痢や便秘になるという悪循環に陥っているケースが多いようです。

【②】腸の知覚過敏

腸にはたくさんの神経が張り巡らされており、便が溜まるとそれが腸壁を刺激して、蠕動運動が起き、排便されます。

ところが腸が知覚過敏になっていると、少しの刺激で急激な蠕動運動が起き、下痢になります。

また普通では感じない程度の刺激でも腹痛を感じてしまうこともあります。

【③】腸粘膜が弱くなる

細菌やウイルスに感染して腸炎になった後は、過敏性腸症候群になりやすいことがわかっています。

なぜなら感染性の腸炎になった方は腸粘膜が傷ついたり弱くなっているため、少しの刺激で痛みを感じたり蠕動運動が強く起きる可能性があるからです。

過敏性腸症候群予防で気を付けること

①ストレスを溜めない

過敏性腸症候群を予防するには、ストレスをため込まないことが何よりも大切です。

健康な人よりもうつ状態や不安を引き起こしやすいので、家に帰ったら、読書やテレビ、好きな音楽を楽しんだり、散歩や軽い運動で気分転換を図ったり、日常生活でリラックスできる工夫をしましょう。

②生活リズムを整える

生活リズムの乱れは心身の健康にさまざまな影響を及ぼします。

毎朝決まった時間に起床し、朝食をしっかり摂り、夜も決まった時間に就寝し、睡眠をしっかりとるといった生活習慣を身につけましょう。

生活リズムが乱れると、活動能力や感情が不安定になってしまいます。

朝起きたら、なるべく外や窓の近くで、太陽の光を浴びてください。

朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ、これを習慣化することで生活リズムも安定します。

過敏性腸症候群の時の食事

腸は食べ物の消化・吸収を行う場所。そのため、どのような食事を摂るかで負担のかかり具合が変わります。

過敏性腸症候群の主な症状は下痢と便秘ですが、いずれも症状などに個人差があります。そのため、何をどう食べればよいのかも人それぞれ。生活の中で自分の体に合う食事を探り、よい食習慣を身につけることが大事です。

①食物繊維の多い食材を摂る

野菜・きのこ・海藻類など食物繊維が多い食材を摂りましょう。玄米・雑穀をご飯に混ぜるのもお勧めです。

食物繊維は腸内細菌(主に善玉菌)のエサとなるため、細菌数の増加につながります。そして食物繊維には便の水分量を調節する作用がありますから、便秘型・下痢型どちらの方も積極的に摂取することをお勧めします。

ただし下痢型の方は不溶性食物繊維(ごぼう、切り干し大根、ブロッコリー、ナッツなど)を摂り過ぎると、下痢や腹部膨満感がより出やすくなることがありますので注意してください。

②発酵食品を摂る

納豆、味噌・チーズなどの発酵食品を摂りましょう。発酵食品には、善玉菌が豊富に含まれています。

善玉菌には、免疫細胞を活性化させる働きもあるため、発酵食品を積極的に摂ることは、腸内環境を整えながら免疫力を高める効果が期待できます。

ヨーグルトなどの乳製品はお腹に良いとされていますが、下痢型の方は乳糖を分解できず不調の原因となることがあります。

乳製品を摂る場合はご自身の体調をみながら摂ってください。

まとめ

誰でも発症する可能性のある過敏性腸症候群。出勤途中や試験中などに腹痛が起きたり、トイレに駆け込みたくなるという症状が継続的に起きたらと考えると、外出することを躊躇するようになり、行動も制約されてしまいます。

原因はストレスと言われていますから、ストレスの原因がわかればそれを取り除くよう努力し、自分なりの工夫でストレスをためない生活を送ること、ストレスを感じたら上手に発散することがとても重要です。

そしてお腹の調子が悪い時には、食物繊維の多い食品や発酵食品を食事に取り入れて、腸内環境を整え、症状の改善に努めましょう。