最近の体重計はとても優れていて、身体の組成も数値化されて出てきます。だから体脂肪率35%と出ると、全体重の3分の1以上が脂肪ということになり、「そりゃあ、見た目もずいぶん変わったでしょうよ」と落ち込む羽目に。
では、そもそも体脂肪とは何なのでしょう。体脂肪、皮下脂肪、内臓脂肪等々、「脂肪」と名の付くものはいくつかありますが、どれをとっても良いイメージではありません。
今回は身体に付く「脂肪」の説明とその原因、付き過ぎた余分な脂肪を効率よく落としていく方法を考えてみたいと思います。体型変化や体重増加が気になっている皆様、どうぞお付き合いください。
お腹周りを中心に内臓につく脂肪が「内臓脂肪」、皮膚の下に付くのが「皮下脂肪」で、この二つの脂肪を合わせて「体脂肪」といいます。
体脂肪はエネルギーの貯蔵庫であり、体温を維持したり、内臓を守ったりと、生きていくうえで重要な役割を担っています。
しかし摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーは脂肪として皮下や内臓の周りに蓄えられます。そして、肥満になり、心臓病や糖尿病などさまざまな病気を引き起こします。
また、摂取エネルギーが適切でも基礎代謝量が低下していると、消費が追い付かなくなり、余ったエネルギーは脂肪として体内に蓄積されます。基礎代謝量が低下する原因は、加齢や運動不足により筋肉量が減るためです。
ちなみに、体重に対する体脂肪の割合が体脂肪率(%)として表されます。
体脂肪率の正常範囲は男性で10%~19%、女性で20%~29%。それ以下は「やせ」、それ以上は「軽度肥満」「中等度肥満」「重度肥満」に分類されます。
内臓にくっつく脂肪なので、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こすリスクが高いといわれています。
内臓脂肪は胃や腸と直結しており、食べ過ぎによって増えますが、代謝活性が皮下脂肪に比べて高いので、摂取カロリーを減らしたり、運動を始めると内臓脂肪から消費されることがわかっています。
つまり「付きやすいが落としやすい脂肪」が内臓脂肪なのです。
内臓脂肪が付くと、お腹周りがポッコリしてくるのが特徴で、見た目から「リンゴ型肥満」と呼ばれることもあります。しかし標準体型のように見えても、内臓脂肪が蓄積している人も案外多くみられます。
皮下脂肪は、皮膚の下に付き、外部からの圧から内臓や骨を守るというクッション的な役割や、体温維持、寒さ対策の役割を担っています。
皮下脂肪は全身に付きますが、とくにお尻や太ももなど下半身に付きやすく、見た目から「洋梨型肥満」とも呼ばれます。
皮下脂肪が蓄積されると、明らかに太っているという見た目の印象になります。皮下脂肪は男性より女性に付きやすく、じわじわと蓄積されるため、内臓脂肪に比べて落としにくいという特徴があります。
運動をすることで、体脂肪を減らすことができます。
前述の通り、内臓脂肪は運動によって減りやすいという特徴がありますから、病気のリスクを回避するためにも運動で脂肪を燃焼させ減らしていくことが大切です。
現代人は昔の人に比べて歩かなくなりました。それが内臓脂肪を増やす一つの原因になっています。少しの距離でもいいので歩く習慣をつけましょう。
一駅前で電車を降りて歩く、エレベーターを使わず階段を上る、夕食後、腹ごなしに散歩をするなど、わずかな時間でも続ければ内臓脂肪は減ってくるはずです。
そのほか、有酸素運動にはジョギングやサイクリング、エアロビクス、アクアビクス、水中ウォーキングなどがあります。
筋肉量が増えると基礎代謝量が上がり、それだけエネルギー消費が高まりますから、脂肪がつきにくい身体になります。
腹筋運動やかかとの上げ下げ、スクワット、腕立て伏せなど無理のない範囲で行いましょう。
体脂肪を減らすための基本は摂取量より消費量を減らすこと。しかし食べる量を極端に減らしたり、ローカロリーの野菜ばかりを食べるという方法はおすすめできません。
なぜなら、確かに体重は落ちますがそれは最初のうちだけで、身体は低カロリーの食事に合わせて代謝を落とすようになり、長期的に見れば太る体質になってしまうからです。
代謝を活発にし、痩せる体質を作るには、体脂肪になりやすい脂質を減らし、エネルギーを消費しやすいたんぱく質や糖質、ビタミン、ミネラル類を積極的に摂ることが重要です。
食べる量は、腹八分目がベストです。野菜や海藻類、キノコ類は低カロリーで食物繊維が多いので腹持ちがよく、食物繊維は糖質や脂質の吸収を妨げてくれるので、内臓脂肪を減らすには最適の食品といえます。
早食いは満腹感を感じる前にたくさん食べてしまいます。よく噛んでゆっくり食べることが食べ過ぎの防止になります。
アルコール自体に栄養はほとんどありませんが、カロリーはそこそこあります。そのうえ、酒の肴に揚げ物や炒め物など脂っこい物を摂りがちです。
アルコールを飲む人はつまみの種類や量を考え、食べ過ぎないよう注意しましょう。そしてアルコール自体もほどほどに。
ちなみに健康の目安とされるアルコールの量は、ビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ワインなら2杯程度です。
高齢で運動ができない人や運動が続かない人に朗報。東京医科大学病院の小田原雅人氏によると、体内のBAT細胞を刺激して内臓脂肪を燃やすという画期的な方法が明らかになったというのです。
BATは脂肪細胞の一つで、皮下脂肪や内臓脂肪は「白色脂肪」、もう一つが「褐色脂肪」と呼ばれるBATです。
「白色脂肪」は脂肪を貯めておく貯蔵庫で、必要な時にだけ分解されてエネルギーになりますが、「褐色脂肪細胞」のBATは、脂肪を貯めながら、どんどん内臓脂肪を分解して熱を産生していくという働きがあり、別名「痩せる細胞」と呼ばれています。
BATが活性した場合の脂肪燃焼効果は、通常の70~100倍とも言われています。
このBAT細胞が最も多いのは赤ちゃんの時で、加齢とともに減っていき、今までは減ってしまったBAT細胞は元には戻せないと言われてきました。
しかし最近の研究で、次のような方法でBAT細胞を増やすことができることがわかりました。
人間の皮膚には寒さを感知するセンサーがあり、ここが寒冷刺激を受けると脳に刺激が伝わりBAT細胞が活性化します。
BATが存在するのは首、肩、肩甲骨、骨髄の周辺や脇の下です。
シャワーを使い、20℃程度の水と40℃程度のお湯を30秒ずつ交互に合計5回ぐらい当ててこれらの場所を刺激をすると、BATが増えるといいます。
また首の後ろをアイスベルトで冷やしたらBATが増えたという実験結果もあります。
センサーを刺激してBATを増やす食材は、緑茶(カテキン)、唐辛子、生姜、わさび、からし、黒コショウ、にんにく、玉ねぎ、ミント、青魚のDHAやEPAなど。
辛みを感じる食材の多くがBATと深く関係しているともいわれます。
摂取するエネルギーが消費エネルギーを上回ると、消費されない余分なエネルギーは、脂肪として皮下や内臓の周りに蓄えられます。
また、代謝が落ちていると摂取する量が適切でも、消費しきれず同様に蓄積されていきます。
特に内臓脂肪は、胃や腸など内臓の周りに付きやすい脂肪で、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞など生活習慣病を引き起こすリスクが高い危険な脂肪です。
とはいえ、内臓脂肪は付きやすい分、運動や食事のコントロールで落としやすい脂肪でもあるため、努力すれば必ず減らすことができ、病気のリスクを下げることもできます。
運動で落とす場合は、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を行い、同時に脂肪を燃焼しやすくするために、スクワットなどで筋力アップを図ることが大切です。
また最近の研究で、BAT細胞を活性化すると脂肪燃焼効果が通常の何十倍にもなることがわかりました。運動ができない方、苦手な方はBAT細胞の活性化に努めてはいかがでしょうか。