就寝中に足がつった経験はありませんか?
軽いものならアキレス腱を伸ばしたり、マッサージすることで数分で収まりますが、ひどいものになるとあまりの痛さに寝ても立っても、腰かけてもいられず、何十分も痛みと闘いながら、痛みが引いていくのをひたすら我慢するしかないというケースもあります。
「足がつるぐらいで」とお思いの方もいるかもしれませんが、そういう方は伸びをした時にピキッと軽くつる程度のこむら返りしか経験したことがないのではないでしょうか。
就寝中にひどいこむら返りが頻繁に起こるようになると、寝不足になり、他の病気の引き金になることもありますし、寝ること自体が怖くなり精神衛生上もよくありません。
ひどいこむら返りが原因で救急車で運ばれたケースもあるとか。これはお医者様に聞いた話なので事実です。
ここでは足がつる原因や対処法について考えてみたいと思います。
筋肉が過剰に収縮して元に戻らなくなり、激痛が起こる症状です。医学的には「有痛性筋痙攣」「筋クランプ」といい、ある程度の年齢になれば、ほとんどの人が1度や2度は経験しているはずです。
つる箇所で最も多いのがふくらはぎです。ふくらはぎは「腓(こむら)」と呼ばれ、ふくらはぎの収縮・痙攣を「こむら(腓)返り」と言います。
しかし、つる箇所はふくらはぎだけではありません。足首、足の裏、足の指、太ももなどさまざまです。一般に、これら足(脚)で起こる筋肉の収縮全般を「こむら返り」と呼ぶケースが多いようです。
重症の場合は筋肉が傷つき、肉離れのような症状になるため、翌日以降も痛みを引きずることがあります。
こむら返りはハードな運動中や就寝中に起きることが多く、加齢によって、また妊娠中にも起きやすくなります。
立ち仕事や座り仕事の人、女性では毎日のようにハイヒールを履いて動き回るという人も起きやすいといわれます。
50歳以上ではほとんどの人が就寝中のこむら返りを1回は経験しており、60歳以上の約6%が毎晩こむら返りが起きて悩んでいるという結果があります。
筋肉は脳からの指令を受容体が受け取り、上手に調整して自由に動きます。この指令システムがうまく働かなくなることが、こむら返りの一つの要因と考えられています。
筋繊維の中にある「筋紡錘(きんぼうすい)というセンサーは、筋肉が伸ばされ過ぎると、これ以上伸びて切れないように「縮め」という指令を出します。
一方、腱にある「腱紡錘(けんぼうすい)」というセンサーは、これ以上負荷がかかると筋肉や腱が切れてしまうという危機を回避するために、筋肉に「緩め」と指令を出します。
この2つのセンサーはバランスを取りながら筋肉の働きを調整していますが、センサーの働きが鈍ると、筋肉のバランスが崩れ、異常な収縮が起きると考えられています。
筋紡錘と腱紡錘センサー弱体化の原因、つまりこむら返りの原因には次のようなことが挙げられます。
筋肉はミネラルバランスがとれていれば正常に伸縮します。
カルシウムやカリウムは筋肉の収縮や神経伝達をスムーズにする働きがあり、この2つを調整するのがマグネシウムです。
こむら返りが頻繁に起こる場合は、医師に相談して血液中のミネラルの量を調べてもらうとよいでしょう
就寝中はコップ1杯程度の汗をかくと言われ、脱水傾向にあります。
筋肉の冷えからくる血行不良も足がつる原因です。
夏場でも冷房や扇風機のつけっぱなしで、布団をかけずに寝ていれば、脚は冷えて血管が収縮し血行が悪くなります。
また寝ている間は身体をほとんど動かさないため血行が悪くなっています。
高齢になると慢性的な運動不足で筋肉の量自体が減ってくるため、こむら返りを起こしやすくなります。女性は女性ホルモンの低下で筋肉が落ちてしまうことがあります。
こむら返りが頻繁に起きる人の中には、病気が関係している場合があります。表を参考に気になる場合は医師に相談しましょう。
【イオンバランスの乱れ】下痢 嘔吐 脱水 熱中症など
【血管の病気】血管演 下肢動脈瘤 動脈硬化 血栓血管炎など
【代謝異常】低栄養 糖尿病 肝硬変
【内分泌系の病気】甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症など
【脊髄・脊椎の疾患】脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア 脳梗塞など
【骨関節疾患】関節炎
【薬の副作用】高血圧薬 高脂血症薬 ぜんそく薬 利尿剤 ホルモン剤など
【マグネシウムが多い食品】わかめ、アオサ、ヒジキなどの海藻類やアーモンドやピーナッツなどのナッツ類。
【カルシウムが多い食品】骨ごと食べられる小魚、豆腐や厚揚げなどの大豆加工品
【カリウムが多い食品】長芋やサツマイモなどの芋類、バナナやキウイなど果物
人は睡眠中も発汗します。寝る前に常温の水やスポーツドリンクを補給しましょう。
冷たすぎるものや飲み過ぎ、いっき飲みは冷えやむくみの原因になり逆効果です。
ウォーキングやスクワットなどで筋力をアップしましょう。筋肉が増えれば血流もよくなります。
一日の終わりに、ふくらはぎの筋肉の緊張を取るために軽いストレッチを行いましょう。
お風呂の中でふくらはぎを揉みほぐし、緊張を取る事も大事です。
ハイヒールを一日中履いている人はふくらはぎの揉みほぐしに加えて、足指のストレッチやマッサージをじっくり行いましょう。
冷えは血管を収縮させ血流を悪くするので、締め付け感のない靴下やレッグウォーマーなどで足を冷やさない工夫をしましょう。
冬は足湯や湯たんぽの活用もおすすめです。
※筋肉のつりは、強い収縮なので、ゆっくり伸ばすことが大事です。
痛くて伸ばすのが難しいときは、優しく筋肉をもみほぐしてください。
即効性のある漢方薬としてお医者様から処方されます。こむら返りが起きたらすぐに飲みましょう。
服用後10分ほどで効いてきますが、飲む頻度が高いと、血圧上昇やむくみなどの副作用が出ることもあるので、高血圧や腎臓病などの疾患がある人はお医者様と相談の上、利用してください。
こむら返りが頻繁に起き、寝不足などで生活の質が下がってしまうことが危惧される場合は、整形外科や神経内科、循環器系の医者を受診しましょう。
前述の芍薬甘草湯のほかに、筋肉の緊張を和らげる薬(筋弛緩薬)や抗痙攣薬が処方されることがあります。
筋弛緩薬というと怖い印象がありますが、筋弛緩薬には末梢性と中枢性の2種類があり、腰痛や肩こりなど筋肉の緊張を和らげるのは中枢性の薬です。
分類上は筋肉の緊張を緩めるという意味で筋弛緩薬に含まれてしまいますが、怖いイメージの筋弛緩薬とは作用も目的も全く別のものです。
ただし、こちらもふらつきなどの副作用があるので服用には注意が必要です。
こむら返りはほとんどが一過性の症状で、数分から数十分で必ずおさまります。
焦らずじっくりとその時を待ちましょう。無理やり動かすと、筋繊維を傷つけてしまうこともあります。
しかし中には毎晩のようにこむら返りが起きるという人もおり、睡眠不足から生活の質は著しく下がってしまい、別の病気の原因になることもあります。
冷えやミネラル不足、水分不足に注意し、普段から筋力をアップさせるスクワットやウォーキングなどの運動を取り入れましょう。
寝る前のマッサージやストレッチで筋肉をほぐしておくことも大切です。
ただし、頻繁にひどいこむら返りが起きる場合は、病気が隠れていることもありますから、医師に相談することをお勧めします。