昔から民間薬的に親しまれてきた「キダチアロエ」。国内でも温暖な地域では、多くの家庭の庭先で見ることができました。
やけどをした時や胃が痛いときなど、庭先から葉をとって来て、中のゼリー状の部分を患部に塗ったり、貼ったり、はたまた葉を切り刻んで飲んだりしたものです。
最近は園芸店やホームセンターで鉢植えを見かけることがありますが、この鉢植えからでもアロエを増やしていくことができます。
ここではキダチアロエの性質や増やし方を紹介します。興味のある方は参考にしてください。
アロエは多肉植物で種類が多く、300種類以上あります。南アフリカからアラビア半島まで広く分布しており、属名は、古代アラビア語のalloeh(苦みのあるの意)に由来し、葉に苦い汁があることににちなんでいます。
アラビア語でアロエを「ロエ」と発音したので、中国では漢字で音写した「蘆薈」とし、日本では音読みして「ロカイ」と言われています。
エジプトやギリシャなどで紀元前から利用が確認され、日本には鎌倉時代に伝来したとされています。
数あるアロエの中で主に利用されているのは、医薬品に使われる南アフリカの「ケープアロエ」、ジュースや化粧品に使われるアメリカの「アロエベラ」と、日本特産で食品や化粧品に使われる「キダチアロエ (Aloe arborescens)」の三種類です。
キダチアロエは、伊豆半島、房総半島など太平洋側の海岸に自生し、栽培加工され商品化されています。
キダチアロエの他にはアロエベラ(A. vera)が多く、その他、アロエ・サポナリア、アロエ・不夜城など多くの品種が食用のほか観賞用として栽培されています。
アロエ属の科は分類体系によって変遷しており、キダチアロエはススキノキ科とされています。過去にはユリ科、アロエ科、ツルボラン科とされたことがありました。
キダチアロエは木のように立つのでこの名がついています。冬に朱色の花が咲きますが、種はほとんどできません。
繁殖力がない反面、強い生命力があり、適応力があって、砂地でも粘土質の土でも育ちます。
しかし、寒さには弱い植物です。乾燥には強いのですが、湿気には弱く、冬に保温のために鉢植えのアロエにビニール袋をかぶせると、通気性をなくし、高温多湿になり、病気が出て失敗します。
キダチアロエは挿し木で増やせます。根を出させるためにはある程度の温度が必要ですから4~5月頃がベスト。挿し穂は、できるだけ太く丈夫なものを選びましょう。
土に挿す茎を17センチぐらい残し、切り口は日光に当てて2週間ほど乾燥させてから乾いた土に挿します。
40~45日ほどで根が出ますから、出始めたらすぐに露地に植えます。寒くなる11月頃に温室や鉢に植えかえて、室内の日当たりのよい場所で育てましょう。
キダチアロエの入手は園芸店、ホームセンターや花屋さんに春の彼岸頃から、2本植えの鉢植が販売されています。
肥料は遅効性(ゆっくり長く効くもの)がよく、化学肥料だけでなく、微量栄養素のある有機質肥料を与えましょう。
アロエの肥料は三要素の「窒素・リン酸・カリ」を成分量で同じ位にし、カルシウムやマンガン等の補給として「苦土石灰」や「草木灰」などを施し、堆肥の他に、発酵鶏糞や菜種粕等も用います。
これら有機質肥料は、三要素のほかにいろいろな微量栄養素を含有しており、土中の有用微生物を増加させ、良い土づくりに役立ちます。
アロエは比較的乾燥に強い植物ですので、地植えの場合は自然の雨で十分です。
しかし、生育をよくするためには適度の湿り気が必要ですから、夏の日照り続きの時や、軒下などで雨が十分に得られない場所では水やりが必要になります。
水は多すぎても少なすぎてもいけません。鉢植の場合は、鉢皿に水が少し溜まるぐらいに補充しましょう。
また水やりの時間は、夏は日中の暑い時を避け、夕方または早朝がよく、冬は凍る心配がありますので、夕方は避けて午前中がよいでしょう。
アロエには虫の害は殆どありません。アロエの種類によっては、アブラムシがつきますので、殺虫剤で駆除します。
また、高温多湿による病気が出ることがあります。栄養バランスを心がけ、肥料管理を適切に行えば、基本的には無農薬で栽培できます。
キダチアロエは挿し穂で増やしますが、根を出させるためにはある程度の温度が必要なので、作業は4~5月ぐらいが最適です。
乾燥にも強いため、路地植えの場合は自然の雨で十分です。しかし、真夏の日照り続きの時は早朝か夕方に水やりをしましょう。
キダチアロエは寒さに弱いのが欠点です。霜が降りたり凍ったりする前に、鉢植えの場合は室内に入れたり、ビニールで覆るなどの防寒対策が必要です。
虫の害も受けにくいので、温暖な地域では比較的育てやすい植物といえます。